みなさんは、最近どんな本を読みましたか?

2013 年 4 月 30 日


私は、先日、百田尚樹氏の「永遠の0」の2回目を読了しました。
2回目に読んだ時の方が泣ける本に出会ったのは、生まれて初めての経験でした。

なぜ、この本に、ここまで魅了されるのか?
それは、私の牛飼い人生と牛への想いとが「永遠の0」の内容と重なる部分があるからだと感じました。
牛という動物は「家畜」いわゆる経済動物です。乳牛ならば、お産をしなければ牛乳はとれません。お産をしてから、1、2ヵ月が乳量のピークで徐々に乳量は減っていきます。
その間に受胎をして、次のお産をむかえれば、また乳量は多くとれます。

しかし、牛はいつでも受胎するわけではなくて、発情期の数時間、そこで受胎しなければ次の発情予定日(全ての牛が予定どうりに発情がくるわけではありません。また時には、
発情の兆候を見せない牛もいます。)その発情予定日まで待たなければなりません。そんな事を繰り返していると、その牛は乳量が少なくなって、その牛自身が食べている、
自分のエサ代よりも、乳代を稼げなくなる牛がいます。そんな牛は、得てして太ってきます。そうなると、なおさら受胎しずらくなります。
そんな時は、やむおえず出荷(と殺場送り)しなければなりません。その他、病気などで回復の見込めない牛なども、牧場をあとにしなければなりません。

その判断を下すのは、私です。
そんな牛たちに感謝を伝えたいと思った時に、20年位前から、そんなやむを得ず出ていかなければならない牛たちに、グイ飲みのボトル(ビタミン剤や薬を強制的に飲ませる時に使うもの)で、日本酒を一合位飲ませるようにしました。
これは、特攻隊の別れの水盃ではありませんが、その事にヒントを得て始めた事です。
牛たちの一生涯を断つ者として、「君らの命は、決して無駄にはしません。必ずやこの牧場の発展のために使わせていただきます。」
そんな気持ちと、お互いの心を清め、鎮めるための意味の「別れの盃」でした。
今でも時々、そのボトルを口にしてから牛に飲ませる事がありますが、これほどマズイ酒はないです。

ちなみに肥育牛の場合は、出荷の前の晩に「盛り塩」を牛の前にしておきます。あの世の道中が無事であるようにと祈って、そして清めの意味もあります。
こんな生活を送っている自分にとって、「永遠の0」という作品は、深く深く考えさせられました。
特攻隊員を含めた兵隊さんたちは、まさに我が牧場の牛たち、そして、司令部の上官や海軍の士官は、私を含めた人間たちのような気がしています。
だからこそ、分かる事があります。

牛の命をもらう人間たちが、どんな生き方をすればよいか?
多くの牛たち、動物たちの犠牲の上で命をつなぐ事ができている私たち人間は、単なる感謝だけでなく生き方で、そのものたちの無念さや想いを表していかなければならないのだと思います。
今、生きている、この一瞬一瞬を、全力で精一杯に生きる。そうしなければ、食べさせていただいている牛たちに失礼だと思います。

素敵な仕事に出会えた事、素敵な本に出会えた事、今、この時代を生きている事に感謝しています。
百田先生、ありがとうございました。
おかげさまで、この仕事に改めて誇りを感じています。そして、牛たちには、なお一層、日々感謝を伝えることができます。

松井牧場を応援してくださる皆様、ありがとうございます。

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